これまでの活動 2003年度

水ワークショップ
第3回「地下水の保全と利用」

日時 2003年10月8日 13:40 – 16:40
場所 ピアザ淡海305会議室
話題提供 殿界和夫(日本地下水学会・環境技術研究協会(高槻市水道部))
参加者 8名
ファシリティター 若井 郁次郎氏(大阪産業大学人間環境学部教授)

(1)話題提供

「地下水利用と高効率バクテリア法の勧め」殿界和夫 13:40-15:00

<配布資料>
  • 講演レジュメ
  • 鉄バクテリア法浄水処理とは
  • 水源・水使用・水処理の流れと課題(二回目までのまとめ)
地下水資源の利用と保全
  • 過剰揚水から利用の規制へ。近年、東京、大阪、名古屋などの大都市では、地下水位が上昇している。
  • 水収支(流れ込んでくる量と汲み上げる量)のバランスを監視することが重要である。高槻市の場合、年間10万トンの水を汲み上げて、40年間地下水の変動がない-バランスがとれている-。⇔琵琶湖畔で心配する必要はない。
  • 地下水は個人の財産と見られていて、法律的に汲み上げに関する規制はない。(都道府県の規制条例はあり。)しかし、地下水は河川や湖などの表流水と常に流通している。地下水も河川や湖と同様に、公共用水として扱い管理していく必要がある。
  • 今、日本国中、水資源について大きな曲がり角にきている。国ははっきりした考え方を出してはいない。水道使用量は減っている。←水多消産型産業の縮小・節水型商品の普及による生活用水の減少。大型スーパー・百貨店・国立大学など水多消費型の施設は自己水源を持つこと(地下水利用)に切り替えている。…水道局にとっては、大口需要者の減少。しかし、ダムは作り続けられている。
    (現在全国に260ヶ所、計画中のものを合わせると520ヶ所。)
    誰がダムの使用量を支払うのか?
    計画はこのままで良いのか?
    このままだと、水道料金の値上げに継ぐ値上げが待っている。
  • 飲み水として使いやすいのは地下水。取り除く必要があるのは、自然由来の鉄、マンガン、アンモニア性窒素だけ。農薬や合成洗剤が混入しないため、難分解性有機物質の心配はない。(→塩素処理に伴う副生成物発生の危険性もない。)
鉄バクテリア法浄水処理
  • バクテリアを用いた生物処理である。還元状態にある地下水中に生息するバクテリアで、酸素を与えてやると爆発的に繁殖する。古いタイプのバクテリアで、鉄・マンガンなどをエネルギー源にしている。塩素・凝集剤を一滴も必要としない処理システムである
  • 処理速度は、現在では、通常の浄水場(120-150m/日)に比べて2倍速(大和郡山市 250m/日)
  • 建設コストが安い。鉄バクテリア法ではろ過池一つあれば良い。凝集・沈殿時の設備-攪拌のためのプロペラや池-が不要になる。
  • 「汚泥」を金属資源として使おう。溜まるのは、酸化した鉄とマンガンだけ。これを汚泥とするのはもったいない。地下から金属資源を抽出するシステムになり得る。→研究中。「汚泥」を埋めたて処理ではなく、役立つものとして使っていきたい。
(2)意見交換 15:10-16:40

エコ村候補地の地下水の条件

  • 愛知川の流れはないが、琵琶湖とつながっている。量としてはいくら汲み上げても問題ないだろう。
  • 現地周辺(影響するのは5km四方)には競合する会社はほとんど来ないものと考える。例え上流に大量に汲み上げる工場ができても、水位は下がっても、枯れることはないだろう。

地下水は安全?
ヒ素

  • 濃度が1ppm以上であれば鉄バクテリア法で取れる。
  • 湖岸はヒ素が大量に出る→現地も出る?現地は鉄も大量に出ると想定されるので、問題ないだろう

水銀

自然由来のものも若干あるようだが、ほとんどは廃棄物から。
エコ村計画地は上流に関係する工場はないので大丈夫。

30-40m以上掘ったほうが安全?

→地域による 地質構造・汲み上げる水層などが関わる。

消費エネルギー

  • 地下水は年間を通して温度が変わらない。冬場お湯を沸かすのに使うエネルギー量は小。カロリー計算すれば明確に示せる。一度ぜひやってみて欲しい。
  • 鉄バク法だと水を作ることのエネルギーははるかに小さい。(金属処理のみ)

コスト(従来の浄水処理に比べたら)プラントの建設コスト・ランニングコスト共に安い

汚泥

  • スラッジは現在埋めたて処理。金属を複産物として抽出して利用できないか?
  • 鉄・マンガンを取り出して、価値ある資源として使う。焼き物の飾りとして使ってはどうか(20%くらいまでなら含められる)。生業・趣味。エコ村の文化が育つ

エコ村での水の使い方

  • 水がいっぱいあるところでは水をいっぱい利用して良いのでは?管理・消費ではなくて水循環である
  • 地下水利用は雨水利用。自分の庭で100平方メートル、200平方メートル、溜めるところを、地下水は自然の構造の中で溜めている。時間のスパンが長い。⇔そういう考え方はエコ村には持ちこんで欲しくない。
  • 「豊富で使えるから使う」ではなく、生活の質を見直すことをベースに200-260l/人・日に抑えることを前提にシステムを使うことが大切なのではないか?
  • 地下に触れない雨水は洗浄力が倍ある。→洗濯をする場合も洗剤が半分ですむ。雨水のままで使えるものは使うべき。
  • 直接雨水を利用する、地下水を利用する。複合水源にするのが良い。
  • いろいろなオプションがモザイクに点在するのが良い
  • エコ村から21世紀の水との付き合い方を示す。
  • 水循環のシステムをモデルとしてつくるだけでなく、水の価値を示すことが重要。
  • 水の価値 水の姿が見える。水は絶えず循環していることがわかる。→丁寧に扱う。地下水はそれを示すのに適している。

自己水源と水ビジネス

  • 一つの団地の中で自己で水源を持つことは法律的には可能。
  • 水道事業は非常に厳しい。できれば自分たちで水を確保する方法を探していったほうが良い。
  • 域外に地下水を送ってビジネスにしては?(売電と同じような考え方)上水道とは単価差が明らかにあるので、これから日本全国に広がっていく動きなのではないか。

手掘りでいこう

  • 井戸掘り専門家に技術指導をしてもらって、手掘りで行う方法もある。(エコ村ネットワーキングはせっかく会員制なのだから)。上総掘りで30-40mは掘れる。コスト減。いい水が飲めるとなったら、皆一生懸命やるのでは?
  • 自分で得たものは関わり方が違う。水源を汚さない、排水に気を遣うなどモラルにつながっていく。
  • 上総掘りは直径が少ない(小さい)ので何本も掘る。小さくても数多く掘って水量を確保すれば実現性はある

その他

  • 補助金をもらいながら、モデルとしてやっていく。手掘り・機械掘りでも安くできるものはある。プランをいくつか並べて比較検討することが必要なのでは。
  • 自噴させるという方法もある。100mほど掘れば自噴するのではないか?→永久的に動力なしで汲み上げられる。
  • 近江八幡市でも大型スーパー(ダイエー、マイカル)では自分のところで井戸を掘っている。ヒアリングすれば、地下水位や水脈がわかるのでは?
  • 予定地にお菓子の工場ができる。いい水が必要なので、恐らく自分のところで掘る。水資源を統一することは可能。使用量が500t以上になれば、システム的にも都合が良いし、コスト的にも安くなる。

(2003,10,23 文責:西山由美)