これまでの活動 2004年度

エコ村シンポジウム
「ゼロ・エミッション提唱者グンター・パウリ氏と考える環境生長経済」

日時 2004年7月22日 13:30-16:30
場所 草津市立市民交流プラザ
主催 滋賀経済同友会、特定非営利活動法人エコ村ネットワーキング
参加者 100名

昨年5月に近江八幡市にて開催いたしましたワークショップの講師であるグンター・パウリ氏を再びお招きし、廃棄物を有効利用したゼロ・エミッションの日本・世界での様々な事例の紹介を交えたセミナーを開催いたしました。「地域経済を活性化するために、今あるシステム全体を持続可能なものへと変革するために、“実践”しなければならない。」といった力強い言葉をいただきました。

13:30
1. 「持続可能な社会経済デザイン」
エコ村ネットワーキング理事長 仁連孝昭

環境生長経済、というのは聞き慣れない言葉だが、「生長」とは植物が生長する、ということ。経済についても植物と同様に、種をまき、育つ、ということが必要であり、経済が健全に動く仕組みを考えている。

<キーワード>
エコロジカルフットプリント、GPI(Genuine Progress Index)、地域通貨、グローバルな公平性、インダストリアル・エコロジー、ゼロ・エミッション

<農業を中心としたインダストリアル・エコロジー>
アメリカ バーリントンのインターベールでの取り組みを紹介。全く廃棄物のない産業を作り出している。ビジネスによって生み出されたマイナスの負荷をビジネスに生かしている。滋賀らしいインダストリアル・エコロジーを構築しよう。

14:00
2. いきものに学ぶ
「滋賀のエコ・エコノミー」を発見しよう!

講師:グンター・パウリ(Zero Emissions Research and Initiatives 代表)
コーディネーター:ピーターD.ピーダーセン(株式会社イースクエア代表取締役)

インターベールの取り組みは、ちょうど私が4年前に取り組んでいたので驚いた。インターベールは滋賀にとっても良いモデルである。

中国の有名な諺をもじると「人に魚を与えても、その人は次の日にはやはり飢えてしまう。しかし彼に魚の釣り方を教えれば…。そしたら今度は魚を取りすぎる!!」というのが現実。どうしてもいつも一つのことをやりすぎる、それが環境破壊に繋がるということが問題である。例えば食料を手に入れようとするだけでも。

日本では様々な会社がゼロ・エミッションを行っているが、一つの問題を集中して解決するのではなく非常に創造的な解決策をとることが必要である。5つも6つも問題を発見し、それを一気に解決しようとすることがミソ。その方がうまくいく。

システム的な発想が必要で、Innovative・革新的にならなければならない。
アメリカ ニューメキシコのProjectは、山火事を減らす目的で始まったのだが、間伐材、きのこ栽培、羊のえさ、セーター製造、在来植物からつくられる染料、アルファルファ栽培などを組み合わせたシステムをつくった。製造と消費をそれぞれではなく、全てをひとつのシステムの中で考えなければならない。

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その他、函館におけるイカスミからインクを作る取り組みや、コロンビア ガビオタスにおける地域に雇用を生み出す事例などをお話くださいました。
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システム全体を持続可能にするには、システム自体を変えなければならない。では何ができるだろうか?
人類は、既に地球が作り出しているもの。地域経済を活性化するために、「イメージ」し、「デザイン」し、そして「実践」しなければならない。

15:40
3. 全体討論会

◎パネリスト

  • グンター・パウリ
  • ピーターD.ピーダーセン
  • 仁連 孝昭
  • 力石 伸夫(滋賀銀行)

(G:グンター氏、P:ピーター氏、仁:仁連氏、力:力石氏)

  • 仁:
    儲けをもっと地域に投資できるはず。システムを変える、ということをどう考えますか。
  • P:
    滋賀県で世界的な先進モデルを示してゆくべきだ。
    (1) このままだと、10-15年以内に石油を原因に戦争が起こる。今年中にも石油文明が下降に向かう。地域経済で賄っていく健全な社会を築いていくしかない。
    (2) 10億人程の中国の新購買層と、貧困でないその他の中国人のことを含めると、このままのシステムでは成り立たない。
  • 力:
    近代化のもたらした問題は、様々な方法で解決するしかない。産学官金、様々な分野からの知恵が必要。ローカルエコノミーが鍵となる。
  • G:
    地域で環境生長経済を起こすには、地域銀行は重要。なぜなら銀行側を説得できればプロジェクトは早く進むから。地域を理解し、地域に投資してくれる銀行が必要なのだ。
  • 力:
    リスクをとっていきます。リスクを見分けることも必要だし、リスクを管理することも必要ではありますよね。
    参加者:
    銀行は、バックボーンを変えていかなければならないのでは?
  • G:
    価値観・倫理観などバックボーンまで考えている、というのは素晴らしい。実践していく上で忘れてしまう人が多い。良い例になる物語があります。
    少年がお父さんに話しをしにいきます。
    「ちょっと私は盗みをしていた」と。
    お父さんは
    「盗みをしてはならない」と言います。
    子どもは
    「より少なく盗むようにします」と言いました。
    父「全くやめないとだめだ。」
    息子「もう盗みに慣れたし、そう簡単にはやめられないよ。」
    父「やめろ」
    息子「週末だけにします。」
    父「牢屋に入ることになるぞ」
    息子「お父さんもだね。」
    父「どういうことだ?」
    息子「いや、泥棒ではない。お父さんは。」
    父「商品を生み、雇用を生み出し、社会的な活動をしている。村の祭りのスポンサーもしているし、赤十字に寄付もしている。環境の賞も受賞した。私はこのコミュニティではヒーローなんだ。」
    息子「(非常に考えこんで)より少なく盗むことによって牢屋に入るのに、より少なく汚染することで賞をもらえるんだ!」

    ちょっとの有害物質、汚染も許されてはならない。完全になくさなければ!
    経済同友会において、どういう協力をすればよいか。ビジョンがあっても新しいスキルが必要。そういったスキルを持った人(例えば大学教授)がいなければ実現しない。

  • 仁:
    始めにシステム、という話が出た。
    廃棄物を処理したらよい、ということではなく、廃棄物を生み出している社会自体をどう変えてゆけばよいのか。廃棄物をうまく利用するシステムをどう構築するか。それを、社会全体で、というのがゼロ・エミッション構想。
    経済面についても、滋賀県全体として成長する部分、サスティナブルな経済を滋賀県全体でどう作るか。
  • P:
    10年前にはゼロ・エミッションと言うと、見向きもされなかったが、社会は変わってきた。
  • G:
    滋賀県は、水が豊かで、歴史的にも豊かなユニークな地域。ユニークなエコ・システム、文化、そして地域経済を作ってゆくには最適な地域。
    最後に、話し合うだけではなく、アクション・行動に時間を費やしてください。
16:30 閉会