これまでの活動 2005年度

大岩剛一氏講演会
「エコ村と住の再生──藁の家でつながり直す」

日時 2005年8月26日(金) 14:00~
場所 コラボしが21会館 3階中会議室1
滋賀県大津市打出浜2番1号(http://www.collaboshiga21.jp/)
参加者 37名
講師 大岩剛一氏(成安造形大学デザイン科教授)
(専門分野等)
住環境論:住居から都市、自然環境まで、
フィールドワークに基づく住環境の研究
建築・インテリアの設計:住宅を中心とする小建築、店舗等
(研究テーマ)
戦後都市風景の変容に関する研究
藁を用いたストローベイル・ハウスの造形的可能性と
「スロー」をキーワードにした持続可能な住環境の研究、
及び国内の普及を図るモデル形成のための研究

藁の家との出会い

お米を食べている日本人としては、藁はちょうど良い素材と言えます。
ストローベイルというのは、壁は厚さ50cmくらいになり、ブロックの表面を土で塗ることによって調湿性がよくなります。
暑い夏は住宅の南の壁が暑くなり北側の壁が冷たくなり、同じ住宅でも温度差ができるが、ストローベイルハウスは全面でほぼ一定になります。
アメリカやオーストラリアでは乾燥地帯が多いため、ストローベイルをそのまま日本に導入してもうまくいかないでしょう。
私が藁に惹かれた理由というのは、藁がもつメッセージ性です。日本では1965年を境に藁の文化は途切れました。私は2000年に藁の家と出会い、その素晴らしさを知りました。日本では藁の文化が途絶えましたが、新しく可能性があると感じました。
アメリカとオーストラリアでリバイバルが起こりました。日本で忘れられた藁の文化が他国では評価されてきたのです。日本では童話の「3匹のこぶた」に出てくる藁の家のイメージが強いのか、あまり印象はよくありません。藁がなぜいいか、ということですが、植物でありながら建築材料に使用でき、その後は果てます。土に還ります。これは非常に魅力的です。

つながりを再構築する

現在は効率的な家づくりが重視されていますが、ストローベイルは最も非効率的な家づくりになります。ストローベイルに関しては、急いで作ることは難しいです。稲にも命があり、旬もあります。材料の持つ『生命時間』に人間が寄り添う。藁を使うという、昔では普通のこと、当たり前のことに、もう一度意味を考えながら家を作ることが大切です。
現在は、住み手と家との関係が切れてしまっていて、非常によそよそしく見えます。ストローベイルハウスは、セルフビルドの住宅であり、住み手と家とのつながりを再構築する取り組みでもあります。環境に対しても、里山を再生してこそ持続可能といえます。そして、新しくつながり直すということは現在の生活の仕方(ライフスタイル)を変えていくことになります。これは、地球環境問題に対して日本が貢献できる基本的なことの一つではないでしょうか?
昔は、家と自然がつながっていました。里山のふもとで、住宅を中心に一つの生態系を作っていました。それは、生き物と家、生命と家の関係を大事にしていました。これを取り戻すことは、非常に手間と時間がかかる作業になります。しかし、地道に続けていくより他ありません。

素材の持つ背景を大切に

ヨシという素材の持つ背景を考えると、その場所にしか育たない材料、つまり素材の風景を大切にしたいと考えています。ビジネスと生態系はリンクしているのです。理屈よりも実際に体験してもらうのが一番だと思います。ヨシを屋根に断熱材代わりに使用するのはとてもいいです。特に2階においては、断熱効果が高まります。

東京 ストローベイル・カフェ

とにかく実際にやってみようという考えから、東京にストローベイルで店舗をつくり、カフェをオープンしました。最初はいろいろな問題点がありましたが、現在は軌道に乗っています。

美山の家

京都府美山町でもストローベイルを建てました。ここは茅葺民家で有名な地域で、稲作も多い地域です。その地域でお米の副産物である稲藁を利用することには意味があるのではないでしょうか。お米の収穫の後に稲藁を自然乾燥させ、ブロックにします。それを積み上げて構造とし、内装の大部分をスギ板で覆っています。

成安造形大学のカフェ

ここは稲藁だけではなく、信楽の間伐材も使いました。2本セットで田の字型に組み、金物で止めています。そのほかにも柿渋や近江八幡の瓦も使っており、昔ながらの地元の材料を活かしていきたいと取り組みました。授業では眠たそうな学生も、こういうことに取り組んでいるときは楽しいようです。素材の魅力に目をきらきらさせておりました。内部の照明はダンボールで作りました。

八ヶ岳 母の別荘

八ヶ岳に持っていた土地に造りました。恥ずかしながら山を持っていたものの、手入れができておらず、生えている木には枝が細い落葉樹と太い針葉樹がある状態でした。ですから、まず鬱蒼とした針葉樹を切ることから始めました。森の手入れができなくて木が育たないのは日本の現状と同じです。つまり、この場所でできないことは日本でもできないと言えるでしょう。また、この家の構造材用に伐る予定の木にすべてしめ縄をしました。身の回りに溢れる俗なものの中からもう一度聖なるものを選び直す意味も込めています。
在来の木造に藁を合わせます。地震のときに柱と一緒に揺れるようにすると、もうびくともしなくなります。
スローテクノロジーとは、虫の命をあやめずに人と虫が共存することに有効です。

記憶が未来まで脈々とつながっていく家

ストローベイルつくりをやっていく中で、暗い顔して来た人も、笑って帰るシーンに何回か出会いました。なるべく自然にある素材、小石や貝殻を埋め込みます。完成後、壁の中の藁が一部見えるようにしておくのも面白いです。
家についてですが、何の家族の記憶も残っていない家はどうでしょうか?家族の記憶が未来まで脈々とつながっていく家が欲しいと思いませんか?つながるというのは人と人、人と自然、人と地域、そして人と記憶など、様々な意味でのつながりになると思います。

記録:(株)地球の芽 高階智里さん
まとめ:エコ村ネットワーキング