これまでの活動 2005年度

セミナー
MAGICAL LIVING 持続可能な未来の家をデザインする

主催 NPO法人エコ村ネットワーキング・(株)地球の芽
日時 2005年5月9日(月) 9:30 – 11:30
場所 ホテルニューオウミ(近江八幡市)
参加者 48名
出演者 エイモリー・B・ロビンス氏(ロッキーマウンテン研究所所長)
ビル・ブラウニング氏(ロッキーマウンテン研究所シニアコンサルタント)
ピーター・D・ピーダーセン氏(株式会社イースクエア代表取締役)
仁連 孝昭(NPO法人エコ村ネットワーキング理事長
今回のシンポジウムでは、資源効率性とグリーンビルディングの世界的シンクタンクとして知られるロッキーマウンテン研究所より、所長のエイモリー・B・ロビンス博士、建築家のビル・ブラウニング氏をお迎えし、化石燃料に依存する社会からソーラーコミュニティへと転換するための戦略や成功事例をお話しいただきました

開会挨拶(エコ村ネットワーキング理事長 仁連孝昭)

基調講演「化石燃料社会からソーラーコミュニティへ」
Part1 エイモリー・B・ロビンス氏より

石油時代終焉の兆しがあちらこちらで見られる中、経済を活性化しながら、いかに次の時代へと社会を転換できるか。アメリカの国家的戦略の概観から日本の可能性を探りました。
技術面については、車両の効率化や駆動効率の向上により、自動車、飛行機のエネルギー効率を飛躍的に上げること、バイオ燃料技術の更なる開発が、石油時代からの転換に有効であることが報告されました。前者の一つの方法として、軍事航空産業の技術を一般の自動車や航空産業に移転することが示されました。一方、政策面については、高効率車の需要を高める政策をとること、新技術の研究・開発にかかるコストを政府が一部負担すること、金融の優遇措置により新産業への投資を活発化させることなどの重要性が指摘されました。
また、ロビンス氏は、中国の現状についても触れました。「現在中国では、エネルギー問題がどこよりも深刻であるため、技術革新の速度も速く、政府も新エネルギーの普及に力を入れている。このままいくと10年後、アメリカでは中国製のエコカーが走り回ることになるだろう。技術革新を加速させてアメリカ国内での雇用を創出するのか、それともこのまま輸入国になるのか、政府の決断が迫られている。」と、我々が取るべき選択を示唆しました。
グリーンビルディングについては、標高2200mに建つロッキーマウンテン研究所で、冬場、-44℃の寒さになるにも関わらず、暖房なしの建築が実現されていること、一方で、46℃にもなるカリフォルニアでは、冷房なしの住宅が実現されていることを紹介いただきました。グリーンビルディングのコストメリットについて、「1983年に建造されたロッキーマウンテン研究所では、その後約10ヶ月でグリーンビルディングにするための初期投資が回収された。現在では、グリーンビルディングにすることにより、従来の建築よりも建築費用を削減できるようになってきている。」との報告がありました。
さらに、「エネルギー資源が無い」「更に効率的にすることはできない」といった日本の固定観念を打ち破ることで、サスティナブルな社会が拓けてくること、日本にも世界的なリーダーとなるチャンスがあることなどをお話しいただいて、講演は締めくくられました。

Part2 ビル・ブラウニング氏より

化石燃料に依存した社会からの転換を目指し、海外のエコビレッジの成功事例をご紹介いただきました。
まず始めにVillage Homes(Davis、California)では、車道と歩道を分離した道路形態や、エディブルランドスケープ(食べられる景観)の形成によって、歩いて楽しいまちづくりが実現されていること、また、歩道の一部を雨水貯留・排水ゾーンとして利用した例の紹介がありました。開発当時は新しい試みであったため、住宅地として広く受け入れられるかどうか、不安の声もあったそうですが、20年経った今は大人気で土地の価値も上がっているとのことです。
また、生態系の修復を兼ねた開発事例であるPrairie Crossing(Grayslake、Illinois)は、地元農業に積極的に関わっているとの紹介がありました。農家に土地をリースし耕作してもらうことで、住民の緑地管理費負担を大幅に削減し、しかも住民が農産物を買う仕組み(例えば4人家族が年間350ドルの支払いで、週に1回新鮮な野菜が配達される)がある等、小舟木エコ村で農を身近に感じる暮らしの仕組みづくりの参考になりました。
その他、シドニーのオリンピック村Newington(Australia)のパッシブエネルギーデザインの住宅やエアコンが必要ない住宅、The Solarie(Battery Park City、New York)の太陽光や雨水利用、植物による排水浄化、室内の空気環境を改善する技術などを紹介いただきました。

参考URL:
・ロッキーマウンテン研究所 www.rmi.org
・報告書 “Winning the Oil Endgame” www.oilendgame.com(報告書のダウンロードができます)

(記録:(株)地球の芽 西山さん・山口さん)