これまでの活動 2006年度
エコと福祉のフォーラム
持続可能なコミュニティとエコ建築
日 時 | 2006年2月13日(月) 9:30-17:40 |
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場 所 | コラボしが21(大津市) |
参加者 | 120名 |
主 催 | ドイツ連邦環境省・滋賀県・滋賀経済同友会 ドイツ環境共生住宅産業ネットワーク/ECOS |
後 援 | 滋賀県立大学・成安造形大学・大阪産業大学・滋賀県建築組合 |
プログラム
挨拶
大阪神戸ドイツ連邦共和国領事館 フリードリッヒ・ラーン氏
滋賀県副知事 安藤よし子氏
基調講演
「日本とアジアにおけるエコ建築とエコ・コミュニティ:過去、現在、未来」
滋賀県立大学環境科学部教授 布野修司氏
これからの展開に向けて
「日独交流の可能性―環境共生住宅産業ネットワーク」
ECOS代表取締役 ウィルヘルム・メームケン氏
セッションA
「エコロジー住宅と地球環境、健康」
コーディネーター:建築家 ヨーク・オスターマイヤー氏
「健康にやさしい室内環境とエネルギー効率のよい建物に対する現代建築物理の寄与」
フラウンホーファー建築物理研究所日本事務所所長、博士 ロレンツ・グランラート氏
「省エネに貢献する革新的なシーリングシステム」
イルブルック・シーリングシステム社国際市場開拓部長 ミヒャエル・ブリーハーン氏
「日本におけるエコ建築の新しい流れ」
安土建築工房代表取締役 西澤由男氏
セッションB
「エコ村から持続可能な社会へ」~ドイツと日本における事例紹介~
コーディネーター: 滋賀県立大学環境科学部教授 布野修司氏
「滋賀におけるエコ村プロジェクト」
滋賀県立大学環境科学部教授 仁連孝昭
「エコ村と文化の再生」
成安造形大学デザイン学科教授 大岩剛一
「エコロジー都市開発のモデル都市フライブルグ市 ― ヴォーバンとリーゼルヘルドの新住 宅地域」
フライブルグ市都市計画局長 ヴルフ・ダゼキング氏
「住民参加による住民のための街づくりードイツでの事例」
ベルリン工科大学経済・経営学部「戦後建設住宅の社会的・ 生態学的な再開発プロジェクト」リーダー、博士 ガブリエレ・ヴェンドルフ氏
エコ村から持続可能な社会へ
「滋賀におけるエコ村プロジェクト」
特定非営利活動法人エコ村ネットワーキング理事長
仁連 孝昭
社会の健康を つくっていく
私たちは持続可能な社会をめざして近江八幡市でエコ村プロジェクトを進めています。エコロジカルフットプリントはご存知の方も多いでしょうが、簡単に説明しますと私たちが生活していくために必要な資源量を土地面積で測ったものです。地球の生産能力を超えた資源を私たちは今使用していることになります。今の私たちのエネルギー利用は持続可能ではありません。持続可能な利用に転換していくことが大切です。
そのためにはどうしたらいいか、まずエコ村から始めたいという思いからはじまりました。なぜかといいますと、エネルギーを利用しすぎるために起こる環境インパクトのフィードバックはすぐにはやってきません。そのため、生活を改善するためのエネルギー利用を減少させることができません。コミュニティを作っていくということが地球の持続可能に繋がっていきます。コミュニティで私たちの社会の健康をつくっていくことです。
都市にも農村にも エコ・コミュニティを
現在の社会は階層的な社会構造で、個々のコミュニティは依存してます。例えば東京に依存しています。食は地域で消費されるのではなく、一旦大都市にもっていかれて、それが配分されるという社会になっています。これはそれぞれのコミュニティが単体では維持できない、ということを意味しています。
私たちが目指しているのは山村のコミュニティ、農村のコミュニティ、また都市のコミュニティがネットワークを作り出しています。あらゆるコミュニティですべてを自立することはできない、しかしできるものはあるはずです。これを探してみたいのです。もしそれができれば、災害などによってひとつのコミュニティが機能しなくなった時にも、他のコミュニティが支えあうことができます。私たちはサステイナブルソサエティといいますが、もっと正確にはSELF- SUSTAINABLE SOCIETYが望まれていると考えています。
小舟木エコ村の実験
そんな背景の中で2000年から小舟木エコ村プロジェクトがはじまりました。まだ具体的に形のあるものにはなっていません。今年中には形が見えてくるのではないかと期待しています。エコ村で実現するコミュニティの性格を「エコ村憲章」という形で2002年につくりました。これはさきほどのSELF- SUSTAINABLE SOCIETYの条件であると考えています。
小舟木のエコ村では次の3つの大きなテーマに取り組もうと考えています。
食と農をつなぐ
ひとつが「食と農をつなぐ」ということです。先ほども言ったように、食と農はつながっている、しかしながらそのつながりが見えないというのが現実です。私たちが人のカラダを維持するために大事なのは食べることですが、その食べ物がどのような成分でどのような効果があるのかわからないままに食べています。また食を供給する農業がどういう実態にあるのかも私たちはよく知りません。もし自分の健康に責任を持とうとすれば、よい食べ物を供給する仕組みに対して責任を持つ必要があるのです。しかし、都市の住民はスーパーで食べ物を買ってくる、レストランで注文するだけです。その前後がわからない。それが見えるようにするために、家庭菜園をエコ村の中に作ろうとしています。そうすることによって地域の農家とつながって持続可能な農業を支えていく消費者を育てることができるのではないか、と考えています。
自前エネルギーを育てる
2番目のテーマは「自前のエネルギーを育てる」ということです。エネルギーは、例えば電気は非常に高度な技術で巨大なシステムで品質の高い電気が供給されそれを利用しています。しかし、最近のアメリカにおける電力供給障害を考えると、私たちが何も知らずにそういったシステムに依存し続けることに無理があるようになってきました。食べることと同じように、現在生活を営むためにはエネルギーは必要なものですから、自前で提供することが必要になっているのだと思います。
しかし、私たちの生活はサプライを考えずに好きなだけ使っているため、供給する側にしてみればとてもやりにくいでしょう。朝と夕方にいっきに電気を使う、昼間は使わない。日本でいえば、夏の暑い時期にピークがやってくる。そういった利用を自然エネルギーで代替することはできません。もしエネルギー源を化石燃料から自然エネルギーに変更しようと思うならば、利用方法を変えなければいけません。となるとコミュニティでの自立が必要となります。そして、エネルギーをお互いに融通しあうという仕組みが必要となります。電力の世界ではマイクログリッドシステムが作られようとしていますが、これをエコ村で育てていきたいと考えています。
パッシブなライフスタイルをつくりだす
3番目に「パッシブなライフスタイルをつくり出す」ことが重要です。かつてのライフスタイルはエコロジカルでした。これをそのまま持ってくるわけではなく、現在に合わせた再創造が必要です。年中23度に保つためのエネルギーを減らそうというわけではなく、冬にはある程度室温が低くても快適に過ごせるように多面的に捉えていかないといけません。その上でパッシブなエネルギーの利用の仕組みを考えていきたいと思います。
人が集まってから はじまる
こうした課題に取り組みたいのですが、エコ村づくりというのは建物を造っておしまいではなく、つくって人が住み始めてから取り組みも始まるのだと考えています。人が集まってからはじまるというプロジェクトのスキームは産官学に加えて民の協力が必要だと考えています。そして今までにないものをつくる先進的なものですので、柔軟な民間のイニシアティブが必要です。もちろん行政の力は必要ですが、法的規制などから先陣を切っていくことは難しいので民間主導が必要です。それからたぶん、試行錯誤を続けていくと思いますので、最初から目標に向かって突き進んでいくというよりも柔軟に適応していくことが必要でしょう。このプロジェクトに取り組む中で人材を養成することが大事とも言えます。
記録:(株)地球の芽 高階さん 白石さん
編集:エコ村ネットワーキング