これまでの活動 2007年度

エコ村セミナー
コミュニティと市場(いちば)

日 時 2007年3月1日(木) 14:00 – 16:30
場 所 コラボしが21(大津市)
参加者 24名
主 催 NPO法人 エコ村ネットワーキング・滋賀県立大学 近江環人地域再生学
話題提供 鵜飼修氏(滋賀県立大学環境科学部助教授/コミュニティ・ビジネスネットワーク事務長)

堤幸一氏((有)とーく代表取締役/京都造形芸術大学講師)

人の暮らしが見える生活圏であり、職住近接のまちづくり「コンパクト・シティ」、そして地域の人々の暮らしと心をつなぐ仕事「コミュニティ・ビジネス」を視野に入れながら、持続可能なまちづくり『エコ村』における市場(いちば)成立の可能性を探りました。


話題提供1「コミュニティ・ビジネスと市場(いちば)」

鵜飼修氏

1.私の考える「エコ村」

社会・環境問題の解決のためには様々な切り口がありうるけれど、私が特に興味があるのは、「社会システム、コミュニティ、ライフスタイル」に関するところ。エコ村も、21世紀を引っ張っていくような社会システムを実践する場として期待しています。
エコ村の生活では、「吾 唯 足ることを 知る」、つまり「今ある環境に感謝する、という気持ちを持つこと」そして、そういう生活を楽しむことが大切だと思います。

2.コミュニティ・ビジネスと市場

市場とは、コミュニティとコミュニティの境界にできるもの。それぞれのコミュニティの余剰生産物や情報を交換し合うことで、人と人とのつながりをつくる場です。一方、コミュニティ・ビジネスというのは、人と人とを心からつなげる事業活動で、志・社会性・事業性の3つの要素で構成されています。
次に、コミュニティ・ビジネス的な市場とは何でしょう? 例えば、高知の朝市、フリーマーケット、浜大津のこだわり朝市を比べてみると、どれもそれぞれに魅力的なのですが、ミッションにこだわった出店者と、それに共感した購入者がいるという点で、浜大津のこだわり朝市が最もコミュニティ・ビジネス的だといえると思います。
このような点から、エコ村での「コミュニティ・ビジネス的市場」の条件を試案すると、

  • ミッションを持っている(地域社会への貢献。浜大津の朝市からの学び)
  • 価値観の共有が見られる(売る人も買う人も)
  • 原則的に地産地消(エコ村ならば、フードマイレージへの考慮が必要。四季を感じる)
  • 事業性も確保(ただし、これがすべてではない)
  • 楽しさがある(これがないと続かない。高知の朝市やフリーマーケットからも学べる点)

といえるでしょう。

3.小舟木エコ村でのプレ・スタディ

小舟木エコ村では、(1)入居者を対象としたもの、もしくは、(2)周辺地域社会との交流における取り組みによる市場の可能性があるのではないかと思います。
例えば、案(1)で入居者(約350世帯)を対象にした場合、1世帯1ヶ月に4000円分の野菜を買うとすると、350世帯×4000円×12ヶ月で1680万円。この事業規模であれば、いろいろ課題もあるとは思いますが、専従1人+パート1人でまわしていけるのではないでしょうか。
案(2)は、近江八幡市の中心市街地の買い物不便さに対して、高齢の方々からニーズの声があることをきっかけに考えることができます。この場合、野菜を売ることの儲けに頼るだけでなく、高齢化する中心市街地の活性化をもとに展開できる可能性もあります。
どちらにしても、いきなり事業として立ち上げるというのは、コミュニティ・ビジネスとしてなじまない。3つのバランスを保ちながら、できることから徐々に始めていくことが大切です。
実践する場はエコ村にも市街地にもあるので、こうしたミッションを担う人が見つかるか、共感してくれる人とつながれるかが、課題になっていくのではないでしょうか。

話題提供2
「エコ村における市場(いちば)形成の可能性」

堤幸一氏

森会長と話しているときに「“もったいない”を生かした市場(いちば)づくり」というアイディアをいただきました。今日は、このアイディアに基づく整理をお伝えします。
生産の側では、滋賀で生産される野菜の一部は、いったん京都の市場に流れ、滋賀に戻ってくる流通パタンがあります。また、県内で消費される野菜のうち、直売所で購入される割合は5%程度であり、地産地消を拡大する可能性は持っていると思います。

一方、消費の側では、例えば、長浜の黒壁から歩いて10分程度の、ある商店では、米原産の野菜を中心とした品揃えで新鮮で安い。お客さんは、自転車や手押し車で来る、周囲の高齢者も多い。滋賀県は、現在、1世帯平均が3人を切り、今後は高齢者の1人暮らしが増えます。80歳代になると、移動手段としての車や自転車の利用は極端に減りますが、15分程度の歩行であれば3割くらいの人が問題ない。となると、歩ける範囲内での購買パタンを確保することが重要になります。

視点を変えて、最近のコンビニでは、高齢者向けのシニアローソン(淡路市)や、子育て世代向けのハッピーローソン(日本橋)などの試行が始まっています。シニアローソンでは、仏壇用の花、和菓子などの品揃えで、車椅子でも取りやすい棚の高さに配置されています。ハッピーローソンでは、2F部分にキッズ・スペースや子どもの一時預かりサービスを供え、子育てセミナーも開催しています。
これらを、民間における販売サービスだけでなく、「社会保障の一環としての市場(いちば)」を考える契機にしてはどうでしょうか。

さて試みに、小舟木のエコ村が自給自足するための条件を概算しました。村内の家庭菜園すべてで生産可能な穀物総量は、おおよそ9374400kcal/年ですが、村全体に供給するとなると3.68日分にしかなりません。域外からの輸入で補うには106haの耕地が必要になります。滋賀県において、米は100%自給可能ですが、麦と野菜は40%程度です。バランスよい供給を実現するには、106haの農家に生産品目の調整をかけ契約関係を結ぶことが必要になります。
また、それら農家から、農産物を集めエコ村内で市場(いちば)を開くとしたら、週2回程度の定期市として、2856kg/日 = 軽トラ9台分が集まるボリュームイメージになります。

参加者のみなさんとディスカッション 進行:仁連孝昭

お二人のお話をうけ、市場(いちば)形成の鍵となる「人と人のつながり」と「モノの循環」について参加者のみなさんとディスカッションしました。

○ たとえば、売る側は、一円でも多く売ろう、というのではなく、お客さんが無駄のない買い物をできるようにしてあげる、という気遣いで提供するような場としての市場(いちば)がいい。だからこそ、お客さんの側も、市場(いちば)を応援しよう、という気になる。観光客向けに町が形成されると、もともとの住民は住みにくくなる。 大手スーパーだと、客が選択できるような品揃えにしようと思うと、廃棄しなければいけない分も多くなる。直売所・商店だと、無駄も少ないし、コミュニケーションも生まれる。

○ 大阪の市場(いちば)で育った。経済成長期の商売のあり方と、今求められていることは同じなのか?小さな店は、売り上げから経費をいろいろと引いたら、手取りはほんの少ししか残らない。結局、小さな店は食べられない。大規模な流通業者と比べて、やっぱり規模のスケールで負ける。市場(いちば)は違う付加価値をつけて、展開していくべきだと思う。フードマイレージや地産地消のコンセプトを入れていければいい。

○ 普通にやろうとしたら成り立たない。だからコミュニティ・ビジネスでやってみたらいい。市場(いちば)は人間らしさを担保する仕組み。まずは共感して支えてくれるコミュニティをどうつくっていくか。

○ 今、残っている商店は、お互いが買って成り立つコミュニティ。純粋なお客さんを引き寄せることが必要。

○ 地域の八百屋さんはコミュニティ・ビジネス的に見えるけれど、支えてくれるコミュニティがあるとは限らない。例えば、コミュニティ・ビジネス的パン屋さんは、立ち上げ時に出資してくれた人には、配当をパンで返す、という仕組みもありうる。

○ 市場(いちば)として、いろんな商いが集まれば、うまくいくのでは?

○ 必ずしもお金をかけて場をつくることだけが解決策ではないと思う。

○ 市場(いちば)は、安心や安全という付加価値がつけられるのがメリットだと思う。ハッピーローソンの事例のように、コミュニティの商店もどんな形で付加価値をつけていけるのかを考えていく必要がある。歩行できる範囲内での店が必要で、コンパクト・シティなどの話が出てくる。

○ 堤さんが紹介してくださった淡路のシニアローソンのあたり。高齢の単身家庭が多いから、小さいパッケージでの売り方をしたり配達したり。小舟木では、値段や利益だけでは対抗できないだろうから、何ができるか?例えば、御用聞きしてくれる弁当屋だとかがあると嬉しい。

○ 地域によって、必要とされる市場(いちば)の形は変わってくると思う。

○ 経済活動としてよりも、社会保障の一環として、市場(いちば)を考えていく必要があるのでは?高齢者だけじゃなく、子育て世代の支援だとか。必要であれば、公的に支援もして開催するべきものなのか、市場競争の中でやっていくものなのか。ローソンは大資本だからできるアンテナ・ショップ。すべてをそうできるわけではない。長浜の黒壁は経済活動だけど、社会保障を考えた『白壁のまちづくり』も必要になっていくと思う。

○ エコ村に入居するときに、マンションのような公益費を集めて、市場(いちば)運営のベース部分だけでも、サポートしていくというのはどうだろうか?

○ エコ村だけでなく、周辺社会にとっても魅力的なサービスにすればいい。たしかに、立ち上げ期はすごく難しい。

○ 最初から儲けようという話ではなくて、徐々にコミュニティの反応を見ながらやっていくといい。課題は中心となって主体的にやっていく人を見つけること。

○ 電気屋さんで、電気交換や修理サービスもセットにするから成り立っているとこがあって、繁盛している。

○ 現代は、商業も「経営」と認識されているから、儲かるようにしないといけなくなっている。

○ お年寄りも子どもも親も、みんなが交差できる場で、市場(いちば)ってすごくいい場。そういう中で子どもが成長していく。教えられる。叱られる。教育の場としても役に立つ

○ 実は地域の電気屋さんは元気。オールラウンドに提供することが求められたときに、知恵と顔を役に立てたスキームをつくっていくことができるのではないか。省エネ・アイディアを提案して、節電料金の半分は電気屋さん、半分は利用者が得する仕組みだとか。市場(いちば)を維持するためのお金も、三方よしを生かした3分の1ずつで担うのがいいのでは?

○ 錦市場は大規模店舗が入ってこないように規制しているが、滋賀はどんどん受け入れてしまっている。

○ 2年間、百菜劇場の畑で作業してきてみて、初めて、オクラの花を食べた。大資本で売られているものにも勝てるものだと思う。畑の中で作業していると、いろいろなアイディアが湧いてくる。

○ 田舎の方にいくとおいしい漬物や鮒寿司をつくるお年寄りがいるけど、若い世代には引き継がれていない。それをつないでいくことができれば面白い仕組みになるのでは。

○ 近江八幡のあたりで、自家消費用でつくっているけれど食べきれないでいる野菜や加工品がいろいろあると思うから、そういうものを受け入れられる仕組みをつくったらいいと思う。
今回は、持続可能なまちづくりの中での市場(いちば)について、皆さんで活発なディスカッションをしていただきました。

記 録:(株)地球の芽 高田さん
まとめ:エコ村ネットワーキング